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竹中労に追いつく

「ライターくらい,誰だってできるよ」
この仕事を始めたばかりのまだ20代の頃,ある編集者にいわれた言葉が忘れられない。

「なんだ,この野郎」などと思っていたものだ。

現在では、誰だってSNSやブログなど様々な手段で,自分の文章を発表することができる。
そういったものを目にするたびに,それなりの主張をしていると頷ける。でも,私の仕事は編集者から無理難題を受けて,はじめて成立するものだと思っている。

どうすれば,世の中の人が一瞬でも私の書いた文章を読んで「これは,問題だ!」と立ち止まってくれるだろうか。
そんなことを考えている。

これまでも,様々な肩書きを使い分けることもあったが,
ここ数年は「ルポライター・昼間たかし」として活動している。

これは,時として後戻りしてしまいがちな自分へ向けた人生の決意表明だと思っている。
己の命がつきるまで「ルポライター」をやめるつもりはない。

こんな私の生き方を決意させてくれた竹中労の「ルポライター事始」。
彼は60歳で生涯を終えたのだが,この本の最初のページで「三文文士」という言葉に「ルポライター」というルビをふった無頼の徒に、
少しでも追いつきたいという夢からは覚めることがない。

彼と同じ歳まで生きることができるとしてあと20年しかない。世界がどうなっていくのか,それを最前線で取材し書き続けたいという希望は揺るがない。

だからこそ,人生の最後も家族や友人に見守られながら悠々と終えることなどあり得ず。どこか辺境の取材で突発的に終わるものなのだと覚悟している。

いつものように次の取材の段取りを考えたり,原稿の〆切に追われたり,取材費のやりくりに四苦八苦しながら,取材に訪れた先であっけなく死ぬのが,ルポライターとしては理想的だ。

新年早々から,謝罪会見や緊急生放送をつい見てしまっている自分がいる。それらを見るたびに感じるのは,少しでも当事者に肉薄し,事実の叫びを聞き出して,「昼間さんなら書いてもよい」といわれる物書きに,明日にでもならなければならないということだ。

「ルポライター」という職業は,そうあらなければならないのである。

『週刊朝日』2016年2月12号掲載
「最後の読書」への寄稿より


















About me

 

昼間 たかし Takashi Hiruma   ルポライター。 1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。 ルポライターとして様々な媒体に 寄稿、取材を続ける。政治からエロまでその取材フィールドの広さは敬愛する元祖・ルポライターの竹中労の面影と重なる。近年『日本の特別地域 東京都 足立区』をはじめとした「地域批評」シリーズを取材・執筆。東京都条例によるマンガ・アニメの性表現規制問題を長く取材する。ゆうばり国際ファンタティック映画祭2009出品作『おやすみアンモナイト 貧乏人抹殺篇/貧乏人逆襲篇』の脚本を執筆。主な著書に『日本の特別地域 東京都足立区』シリーズほか地域批評シリーズ。永山薫との共著作 『2007-2008 マンガ論争勃発』・『萌える名作文学ヒロイン・コレクション』等がある。 (『コミックばかり読まないで』著者紹介より)

 

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コミックばかり読まないで

(イースト・プレス刊)

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